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【もしかして認知症?】#09 家の前を通りすぎてしまった父

父の介護記録

こんにちは。
50代独身、実家暮らしのいさこです。

父が70歳を過ぎたころの話です。

ある選挙の投票日、父・母・わたしの3人で、投票所になっている地元の中学校まで歩いて行きました。

いつもは車で行っていましたが、その日は天気もよく、「散歩がてら歩いて行こうか」ということになったんです。

運動にもなるし、たまには歩くのもいいよね、と。

ちなみに父は、どんな選挙でも必ず投票に行く人でした。

「選挙には絶対行かないといけない」

それが父の考えでした。

母やわたしは、正直なところ「日曜日くらい家でゆっくりしたいな」と思うこともありましたが、父に言われると結局みんなで行くことになる。

そんな感じでした。

今思うと、マジメで責任感の強い父らしいところだったなと思います。

投票所までの道は、父が先頭を歩き、後ろを母とわたしが並んで歩いていました。

父は昔から歩くのが早い人でした。

気がつくとずっと前を歩いていて、「ちょっと待ってよー」と声をかけるのも日常。

方向感覚もしっかりしていて、道に迷うような人ではありませんでした。

旅行も、事前に地図で確認してから行くタイプで、迷ってウロウロする時間がもったいないと考えるような人でした。

投票を済ませた帰り道も、父はサッサと前を歩いていました。

母とわたしは後ろからのんびり歩きながらおしゃべり。

特に変わったことのない、いつもの休日の風景でした。

「あ、お父さん先に家に着くね」

そんなふうに思って見ていた次の瞬間でした。

父が、そのまま家の前を通り過ぎて歩いて行ってしまったんです。

え……?

わたしは思わず母の顔を見ました。

母も同じタイミングでこちらを見ていて、「あれ?」という顔をしていました。

家を見落とす距離ではありません。

父と母、2人で買った夢のマイホーム。

何十年もそこに住んでいます。

なのに父は、まるで別の場所に向かうみたいに、そのまま歩いて行ってしまいました。

わたしは少し大きな声で、

「お父さん、どこ行くの?」と声をかけました。

すると父は、一瞬こちらをふり返り、何事もなかったように戻ってきました。

「ああ、ああ」みたいな感じで。

でも、なんで通り過ぎたのかは説明しませんでした。

母がやんわり、

「家、通り過ぎてたよ?」と聞いても、

「いや、ちょっとな」みたいに、なんとなくごまかして終わったんです。

その時は、「疲れてぼーっとしてたのかな」くらいに思っていました。

投票所まで歩いただけとはいえ、父も70代。

年齢的に、そういうこともあるのかな、と。

でも心のどこかには、小さな違和感が残りました。

父は、こういう”うっかり”をする人ではなかったからです。

昔の父なら、自宅を通り過ぎるなんて考えられませんでした。

帰宅後、父はいつも通りテレビを見て過ごしていました。

特に変わったようすもありません。

母とわたしは、「さっきの何だったんだろうね」と少し話したものの、その時はまだ認知症を疑うほどではありませんでした。

ただ、今ふり返ると、あれも初期のサインのひとつだったのかもしれないと思います。

認知症というと、

・大きな物忘れ
・徘徊
・家族の顔がわからなくなる

そんなイメージを持っていました。

でも実際には、「あれ?」と思うような、小さな違和感の積み重ねでした。

本人も自然にごまかす。

家族も、「気のせいかな」と思う。

だから気づくのが難しい。

父が家の前を通り過ぎて行ったあの日の光景を、わたしは今でもはっきり覚えています。

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