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認知症になった父が、大好きだったお酒を忘れた日【介護体験記 第2章 #10】

父の介護記録

こんにちは。
50代独身、実家暮らしのいさこです。

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今回は、父とお酒について書いておきたいと思います。

父を語るうえで、お酒は切っても切り離せない存在でした。

父は昔からお酒が大好きでした

わたしが子どものころ、父は毎晩夕食の時間になると晩酌をしていました。

父方の親戚もみんなお酒好きで、お正月や親戚の集まりでは、子どもたちは遊び回り、大人たちは楽しそうにお酒を飲んでいたことを覚えています。

当時の父は仕事をしていたので、お酒を飲むのは夜だけ。

ごく普通の晩酌でした。

定年後、お酒を飲む時間が少しずつ早くなった

父は定年退職後、これといった趣味もなく、ほとんど家で過ごすようになりました。

最初は夜だけだった晩酌が、夕方からになり、やがて昼過ぎからになり、最後には朝から飲むようになっていきました。

当時、家族はみんな仕事や学校があり、父の話し相手になる余裕はありませんでした。

仕事から帰ると、父はすでに酔っ払っている。

そんな毎日が続きました。

家族との衝突も増えていきました

お酒を飲むこと自体が悪いわけではありません。

若いころは、楽しそうに飲んでいた記憶があります。

でも定年後は違いました。

酔うと不機嫌になり、家族に当たることが増えていったのです。

お酒の飲み方をめぐって、家族と何度も口論になりました。

わたしも父と殴り合い寸前までいったことがあります。

それくらい、酔った父は手がつけられませんでした。

わたしたちは「お酒をやめて」と言ったことは一度もありません。

父がお酒を心から好きなのは知っていたからです。

だからこそ、量や飲む時間だけでも考えてほしかった。

でも、その思いは最後まで父には伝わりませんでした。

今になって思うこと

あのころは理解できませんでした。

好きなお酒を飲んでいるのに、どうして機嫌が悪くなるんだろう、と。

でも今振り返ると、父は寂しかったのかもしれません。

家族はみんな仕事や学校で忙しい。

一方で、自分だけが毎日家にいる。

そんな孤独や寂しさを、お酒で埋めようとしていたのではないか。

今はそんなふうにも思います。

アルコール依存症とまでは言えないかもしれませんが、それに近い状態だったように感じています。

入院をきっかけに、お酒を忘れてしまった父

そんな父でしたが、敗血症で入院したことをきっかけに、一滴もお酒を飲まなくなりました。
👉敗血症で入院したときの記事はこちら

入院中はもちろん飲めません。

でも驚いたのは、退院してからでした。

父は、お酒を欲しがることが一度もなかったのです。

家族は内心とても心配していました。

テレビでビールのCMが流れるたびに、「思い出して飲みたいと言うかもしれない」とヒヤヒヤしていました。

でも、それは杞憂でした。

父の頭の中から、お酒という存在そのものが、すっぽり抜け落ちてしまったようでした。

入院する前日まで毎日飲んでいた人が、認知症の影響で、大好きだったお酒のことを忘れてしまう。

そして父は、そのまま亡くなる日まで一滴も飲むことはありませんでした。

認知症の怖さを感じた出来事

父は昔からよく言っていました。

「お酒をやめて長生きするくらいなら、寿命が縮まっても好きなお酒を飲みたい。」

実際、その言葉どおりに生きてきた人でした。

だからこそ、お酒を忘れてしまった父を見たときは、本当に不思議な気持ちになりました。

結果として、お酒をやめられたことは父の体にとって良かったのだと思います。

でも同時に、認知症とはこんなにも簡単に、その人が長年大切にしてきたものまで奪ってしまうのか。

そう思うと、とても怖くなりました。

今でも忘れられない出来事のひとつです。

次回は、認知症が進んだ父に見られるようになった”ある変化”について書きたいと思います。少しずつ父らしさが失われていくようすを、家族の目線でお伝えします。

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